こんにちは、柿次郎です。
ここ最近、昭和バブル旅行の象徴「熱海」に夢中だったんですが、正直熱海のことをナメてる人が大半ではないでしょうか。いやー、僕もナメまくってたんです。シャッター商店街、寂れた温泉街、股から吹き矢をピュッと出して風船を割るおばさん…これが僕の頭にある熱海の引き出しの全てです。いざ取材をしてみると…
全然間違ってた…!
バブル期を超えた現在の熱海はすげー面白い!
詳しくは、ジモコロで作った熱海三部作を読んでみてください。ダイジェストで会話部分も引用してるので、詳細は本記事でどうぞ。
●B級スポットとしての面白さ
「いやー、想像以上におもしろかったね。日本唯一の秘宝館として生き残った意味が分かった。基本的にレトロでチープなんだけど、時代背景的にバカバカしさが上回ってくるというか」
「写真撮影禁止、模写禁止も納得。あと若い女の子がグループで遊びに来てるのが意外だった」
「うんうん。SNS全盛期のこの時代、写真レポートで満足することって往々にしてあるからね。その点で秘宝館は『現地に行かないと何も分からない』し、『行った人は友だちに教えたくなる』設計になっていてすごい」
「ほんとそれ。リアル脱出ゲームみたいに現地での体験を大事にしてるから、ネット上の消費に流されない強さがある」
「何十年も前からこの視点に気づいてるってヤバくない? あと、売店のおばちゃんに聞いたんだけど、運営元が後楽園ホールや東京ドームをやってる株式会社東京ドーム(正確には関連会社の株式会社アタミロープウェイ)らしいよ」
「意外すぎる」
「観光客が絶えないこともあって、いまだに施設のアップデートを繰り返してるとも言ってた。入り口の人魚は最新のモノで、白蛇神社も近々リニューアル予定だとか」
「いつの間にそんな情報仕入れてたのよ」
「恐るべし秘宝館…。熱海を訪れたら絶対行くべきスポットだと思う。ジモコロが自信をもってオススメします!」
「おっさん二人じゃなくて、女の子と行った方が絶対楽しいね」
「間違いない」
●謎の離島「初島」を組み合わせた歴史の面白さ
「初島の歴史について取材してるんですけど、お話聞いてもいいですか?」
「いいよー!」
「元気ですねぇ。この島で生まれ育ったんですか?」
「そうだよ。初島で生まれ育って77年。戦争もこの島で経験したからねぇ」
「島の生き字引きだ! 早速お聞きしたいんですけど、民家や民宿が密集しているのはなぜなんですか?」
「ああ〜。二つ理由があってね。小さい島だから海風が強いでしょう? 隣り合わせて民家を建てることで海風を防げるわけ。もちろん家によって影響は変わるんだけどね。島自体も海風を避けるために、海岸沿いに松の木を植えてるのよ〜」
「なるほど! 松の木がやけに多いのはそのためだったんだ」
「もう一つはね、そもそも水道やガスがこのあたりまでしか引かれていないのよ。だから密集してるの」
「めちゃめちゃ分かりやすい理由ですね。古くから41戸しか住んではいけない理由も、ライフラインの問題なんでしょうか」
「そうそう。ここは半農半漁の島なんだけど、耕作地も家を建てる土地も限られているでしょう。水源も少ないし。だから増やそうにも増やせないのよ。といっても島の高齢化が進んでいて、今では住む人も減って30世帯ぐらいしかいなくてね…」
「ここでも過疎化の流れが…。家は長男が継いで、次男、三男は島外へ出るわけですよね。初島に移り住むことって可能なんですか?」
「お嫁に来てくれたらいいのよ〜! 私の家でよければ大歓迎よ? あっはっはは〜!」
「深刻そうなのに明るい〜! ここの土地の人は外から来た人に対して、すごく優しいですよね。観光業が中心だからなのかなぁ」
「それはそうよ。島外からお客さんが来てくれないと私たちの生活は成り立たないもの。GWや夏休みシーズンは島内に人が溢れかえっちゃうくらいで。住んでる私たちも楽しいし、お客さんも魅力があるから集まってくれるんじゃないかしらねぇ」
●熱海ハリウッド化を目指す最強のおじさんの面白さ
「平成24年度から26年度にかけて、60本から110本に増えてます。2年でざっくり2倍のロケが行われていて、入湯税ベースも大体105%くらい順調に成長している。事業を始める前から計算すると単純にロケ地が3倍以上になっているそうで。これ僕の勘なんですけど、もしかして山田さん2人いませんか?」
「いや、いませんから」
「あ、そうですか」
「もちろんロケの大小はありますが、1つの作品や番組で大体平均5日掛かるんですよね。それが110本ということは、ざっくり550日くらい。なので、1日にロケハン2件、合間抜けてロケハン2本やったりとかしてます」
「ロケ事例を見てもかなりバラエティに富んだ番組ラインアップなんですけど、『食いしん坊バンザイ』なんかは6週連続で取り上げてもらったとか」
「最初は熱海ともう1箇所の2箇所で6週放送の予定だったんですよ。それが、私がいろんなお店を紹介していくうちに、向こうのディレクターさんが『熱海で6週分いっちゃいます!』と言ってくださって。その後さらに、『食いしん坊バンザイ』の40周年記念の特番にも出していただきました」
「ちなみに、一度に回してる案件ってどれくらいですか?」
「365日、常に5〜10本くらい抱えてます。1本終わると2〜3本違う企画の話をもらったりして。平成26年度に映画のロケ数が伸びたのは、確実にリピートですね。『ロケ地で困ったら熱海』みたいなことになっているらしくて」
「それ、『困ったら熱海』というより『困ったら山田さん』ですよね」
「例えば、『学校のプールを明後日の深夜に使いたい』みたいな無茶振りとか」
「それも実現させるんでしょ?」
「何とかします」
「山田さん、寝てますか?」
「寝てます」
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というわけで雑に引用してみましたが、いざ面白いものを探す目線で熱海と初島をウロウロしていると、「ただ近いだけの温泉宿」「寂れた昭和の観光地」といったこれまでのイメージは払拭されて、バブル期を通った熱海のポテンシャルは2016年になってより一層際立つ存在だと気づくことができます。
B級スポットを楽しむ姿勢はどの土地に行っても必要ですし、海の幸や温泉などクオリティの高いものを都内からすぐの距離で楽しめるのは最高だし、人や歴史に興味を持てば「話を聞く」だけで旅の満足度が上がります。こういった観点を取り入れて、普通の土日に熱海を訪れてみてはいかがでしょうか! 地味に混んでるよ!!
書いた人:徳谷 柿次郎
ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916